契約/取引

ECサイトの利用規約の作成方法は?作成の注意点や必須項目について解説

利用規約は、ECサイトを開設する時に必ず用意する必要があります。
自社にとって必要な項目を正しく把握した上で、利用規約を定めることはECサイト運用において重要なポイントです。

今回は、ECサイトの利用規約を作成する際の注意点や必須項目について、規約の例文を踏まえて解説します。
この記事を読むことで、ECサイトの利用規約を定める際の注意点が理解できるので、ぜひ参考にしてください。

ECサイトの利用規約とは?

利用規約とは、サービスを利用する際のルールを定めたものです。ECサイトの場合、運営者・購入者間で同意されたサービスの利用ルールのことを指します。

ECサイトを運営するにあたって、利用規約を作成する義務はありません。
しかし、仮に利用規約を作成しなかった場合、運営者・購入者の権利・義務や守るべきルールについて購入者1人1人に個別に説明する必要があります。
不特定多数の消費者が利用するECサイトにおいて、個別に説明・交渉をするのは現実的ではないでしょう。利用規約を明文化しておくことで、こうしたトラブルを回避できるのです。

ECサイトの種類によって利用規約で注意点が異なる

ECサイトの利用規約は、ECサイトの種類によって作成時の注意点が異なります。

ECサイトは大きく分けて「自社EC」と「モール型EC」の2種類に分けられます。
まずは、自社EC」と「モール型EC」の違いについて見ていきましょう。

自社EC

自社ECとは商品を自社が所有・運営するサイトで販売するタイプのECを指します。
運営者・購入者の2者間で取引が行われるため、ID・パスワードの管理責任を明確にしておく必要があります。

モール型EC

モール型ECは、1つのサイトに多くの事業者が出店しているタイプのECです。
モール運営者・出店者・購入者の3者間で取引が行われるため、トラブル防止のため責任の所在を明確にしておく必要があります。

【例文付き】ECサイトの利用規約を定める際の注意点

ECサイトの利用規約を定める際の注意点は、主に次の6点です。

  1. 契約成立のタイミングを明確にする
  2. ID・パスワードの管理責任を明確にする
  3. 消費者契約法に違反しないようにする
  4. 返品に関する説明をする
  5. 整合性がとれた利用規約を作成すること(モール型ECのみ)
  6. トラブル発生時に誰が対応するのかを明確にすること(モール型ECのみ)

自社EC・モール型EC共通の注意点

1,契約成立のタイミングを明確にする

ECサイトでの取引は、対面での取引と比べてどのタイミングで契約が成立したのかが分かりにくい傾向があります。

よくあるのは、注文確認メールの送信をもって契約成立とするケースです。
この場合、購入者から注文が入ると自動送信メールが即座に送られる仕組みにすることが多いため、売り手が予測できない不利益を被る恐れがあります。

たとえば、在庫管理ミスにより注文を受けた商品の在庫がなかった場合、契約が成立したにも関わらず商品を発送できません。購入者から損害賠償を請求されるなど、トラブルの原因になりがちです。

契約成立を「商品発送時」や「商品発送通知のメール送信時」とすることで、こうしたミスやトラブルを防ぐことができるでしょう。

【規約例】

第〇条(売買契約の成立)

1 利用者による注文は、商品購入に関する契約の申込みとします。当社より送信する商品発送通知メールをもって契約の申込みが承諾され、売買契約が成立したものとします。

2,ID・パスワードの管理責任を明確にする

ECサイト利用時には、各ユーザーが個別のID・パスワードを使ってサービスにログインする必要があります。ID・パスワードが悪用された場合、管理責任の所在が明確になっていないとトラブルの原因になりかねません。

利用規約において、ID・パスワードの管理責任がユーザーにあることを明記しておくことが大切です。

【規約例】

第〇条(アカウントの管理)
1,利用者は、当サイトに登録した情報(メールアドレス、ID、パスワード等)を自己の責任において管理するものとします。利用者は登録情報を第三者に利用させることや、貸与、譲渡、売買などを行うことはできません。

3,消費者契約法に違反しないようにする

消費者契約法とは、消費者・事業者間の情報の質や量、知識などの格差を考慮し、弱い立場にある消費者を保護するために作られた法律です。
消費者の利益を一方的に損ないかねない条項を利用規約に載せたとしても、消費者契約法により無効となります。

【規約例】

代金が未払いの場合、利用者は未払金額に対し支払期日から1日超過するごとに〇%の遅延損害金を上乗せした金額を支払わなければならない。

消費者契約法では、遅延損害金の利率が年14.6%を超える場合、超過分については無効と定めています。上の規約例にもとづいて遅延損害金を算出した場合、支払期日から日数が経過するごとに利用者が支払うべき金額が増え続けることは明らかです。このように、消費者が支払うべき損害賠償の額を予定する条項を定める場合には、消費契約法で定められている上限を超えていないか確認する必要があります。

4,返品に関する説明をする

ECサイトでトラブルになりやすいケースとして「返品」が挙げられます。
返品については「特定商取引法」でルールが定められているため、法律に則って返品特約を定めなくてはなりません。

特定商取引法が定めている返品のルールに則って返品特約が表示されていない場合、購入者は一定期間内に商品などを返品することができます。

【返品特約が適切に表示されていない例】

  1. 各商品紹介ページに返品特約について表示されていない
  2. 返品特約に関する表示と商品紹介の位置が離れすぎている
  3. 容易に読めないほど小さな文字サイズで返品特約が表示されている
  4. ページの端など利用者が見つけにくい場所に返品特約が表示されている

上記のような表示になっている場合、返品特約が利用者に対して適切に通知されているとは見なさレません。

返品特約が適切に通知されていないとみなされた場合には、消費者保護の観点から一定期間内の購入者による返品が認められています。
返品については明確に、利用者が間違いなく認識できる形で表示するようにしましょう。

モールECで注意するポイント

5,整合性がとれた利用規約を作成する

モール型ECサイトでは、モール運営者・出店者・購入者の3者間が取引に関わることになります。
商品やサービスを購入した利用者は、出店者との間で売買契約を結ぶ点に注意してください。

モール運営者が利用規約を作成する際には、権利関係についてきちんと整合性がとれているかどうか確認する必要があります。
たとえば、モール運営者の規約では返品時の対応について「出店者が送料を負担する」と定めているにも関わらず、出店者が「利用者が送料を負担する」という規約を独自に定めていた場合、どちらがのルールが適用されるのか不明のためトラブルの原因になりかねません。

また、どのタイミングでどの当事者が契約を結ぶ必要があるのかについても、はっきりと利用規約に記載することが大切です。
モールが提供する自動送信メール機能を出店者が利用する場合、どのタイミングでどのような内容のメールが利用者に届くのかを把握した上で、「商品発送通知のメール送信をもって売買契約の成立とする」などの条項を定める必要があるでしょう。

6,トラブル発生時に誰が対応するのかを明確にする

モール型ECサイトの利用規約においては、利用者と各出店者の間でトラブルが発生した場合の解決方法を明確に定めることが大切です。

一例として、注文した商品が届かないというクレームを受けた場合の対応を考えてみましょう。
モールによって、商品の在庫管理や発送作業をモール運営者が担当する場合と、出店者が担当する場合があります。ミスの原因を突き止め解決を図るのはモール運営者なのか、出店者なのか明確に定めておかなくてはなりません。

トラブル発生時における責任の所在が曖昧なままにしておくと、適切に問題解決を図ることができず利用者に多大な迷惑をかけることになります。
出店者が全面的に責任を持つのか、モール運営者が介入するのか、介入する場合はどの範囲の責任を負うのか、利用規約できちんと定めておく必要があるでしょう。

ECサイトの利用規約に関する疑問

ECサイトの利用規約について、よくある質問をQ&Aにまとめました。利用規約を作成する際の疑問点や不明点を解消して、適切な利用規約を定めましょう。

Q1,ECサイトの利用規約は誰が作る?

利用規約は基本的にモール運営者が作成します。

一般的な契約においては、条件等を当事者間で話し合った上で決めるのが通常のあり方です。
一方、利用規約はモール運営者が作成した上で、利用者に対して同意を求めるのみとなります。
したがって、利用者にとって不利な条項とならないよう、利用規約を作成する際には細心の注意を払わなければなりません。

利用規約はモール運営者側の一方的な都合で決めるのではなく、利用者に十分配慮して作成する必要があります。利用者にとって明らかに重い負担を強いる条項は、利用者の合意があったとは認められない場合があるため注意してください。

Q2,ECサイトの利用規約に雛形はある?

結論としては、ECサイトの利用規約の見本となる雛型は存在します。
検索サイトで「ECサイト 利用規約 雛型」と検索すれば、雛型は容易に発見できるでしょう。

こうした雛型を参考にしながら利用規約を作成しても問題ありません。ただし、雛型をそのまま流用するのは避けたほうが無難です。雛型はあくまでも必要最低限の項目が掲載された「サンプル」に過ぎません。実際に運用していく中で不備が発生する可能性が高いことから、内容を十分に精査した上で自社のECサイトに合った内容に整える必要があります。

まとめ

ECサイトの利用規約は、モール運営者・購入者の間で同意されたサービスの利用ルールです。

自社ECとモール型ECでは定めておくべき条項が異なるため、自社のECサイトに合わせて適切な利用規約を設ける必要があります。今回紹介したポイントを参考に、自社にとって必要な項目を整理した上で利用規約の作成を進めてください。

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