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ランニングコストとイニシャルコストの違いとは?実例、算定方法を解説

企業が継続的に利益を上げていくためには、さまざまなコスト管理が求められます。そのなかでも重要なものとして挙げられるのが、ランニングコストとイニシャルコストです。この2つのコスト管理を適切に行うためには、まずそれぞれの概要把握が欠かせません。

ランニングコストとは?

企業にとってランニングコストとは、毎月定期的にかかる費用を指すものです。日本語では、運転資金もしくは経営・運営・管理にかかる費用などと訳されます。

ランニングコストの低減が実現すれば毎月の利益が向上しますが、無理に出費を抑えてしまうと、業務が滞ったり従業員の負担が増えたりといった弊害もあるため十分な注意が必要です。

ランニングコスト 実例

では小売店舗を例に、具体的なランニングコストにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

  • 地代家賃

店舗を運用していくうえでかかる家賃。また、商品を保管しておく倉庫が別にある場合は、倉庫の家賃も含まれます。

  • 水道光熱費

照明やエアコン、商品ディスプレイ用の灯りや電気を使った看板などにかかる電気代。事務所で利用するガスや水道代など。

  • 通信費

電話代やインターネットを使う際にプロバイダに支払う料金など。

  • 人件費

店舗で働くアルバイトも含む従業員に支払う給与、賞与、社会保険料、交通費など。

  • 広告宣伝費

店舗への集客を増やすための広告宣伝に使う費用です。また、キャンペーンや割引・セールなど単発で行われる広告宣伝にかかる費用もランニングコストに含まれます。

  • 保険料

店舗にかける火災・地震保険のほか、店舗保険など。

  • リース費

コピー機やプリンター、レジスターなどをリースしている場合にかかる費用です。

  • 車両費用

商品の配達に車やバイクを使っている場合のガソリン代、保険料、駐車場代など。

  • 税金

法人税や法人住民税、消費税、源泉徴収税など企業として支払う税金はすべてランニングコストになります。

  • その他の費用

プリンターのインク代、コピー機やFAXで使う紙代、食器洗剤やトイレ用洗剤なども定期的に購入するもののため、ランニングコストの一つです。

イニシャルコストとは?

企業にとってイニシャルコストとは、事業を始める際にかかるコストを指すものです。日本語では初期費用や導入費用などと訳されます。

イニシャルコストを抑えるには、安い設備を導入する、安い店舗を借り入れるなどが考えられますが、その分、利益を向上させる可能性も低くなってしまうリスクが伴うため注意が必要です。

イニシャルコスト 実例

では、ランニングコスト同様、小売店舗で発生する主なイニシャルコストの実例を紹介します。

  • 店舗・事務所・倉庫にかかる費用

店舗や事務所、倉庫の家賃はランニングコストですが、借り入れる際にかかる敷金や礼金、保証金、仲介手数料など、最初だけかかる費用はイニシャルコストです。また、居抜き物件を借りる際の造作譲渡費、新たに店舗向けに工事をする際にかかる内装工事費などもすべてイニシャルコストになります。

  • 設備購入費

店舗を運営するのにかかる設備を購入するための費用です。商品陳列用の棚、照明、パソコンやコピー機、プリンター、レジスター、電話機、クレジットカードリーダーの導入初期費用、空調管理機器、従業員用のロッカー、防犯設備などが挙げられます。また、事務用の机、椅子、書棚、冷蔵庫や倉庫用の棚なども含みます。

  • 備品購入費

筆記具、清掃用具、従業員用のエプロン・ユニフォーム、ディスプレイ用の小物、商品を梱包するためのガムテープ・セロテープ・包装紙・段ボールなど店舗運営にかかわるさまざまな備品の購入費です。

  • 人材採用費

人材を採用する際にかかる費用です。求人募集メディアに掲載する費用や採用後の研修にかかる費用が含まれます。

  • システム導入費

販売管理や顧客管理、会計管理、マーケティングオートメーションツールなどのシステムを導入する際にかかる費用です。クラウドのサブスクリプションサービスを利用する場合、毎月かかる費用はランニングコストになります。

ランニングコストやイニシャルコストの意味について詳しく知りたい方はこちら

すぐにわかる!ランニングコストの意味とは?イニシャルコストとの違いも

ランニングコストとイニシャルコストの算定方法

一般的にイニシャルコストは固定費、ランニングコストは変動費として分類します。そして、企業が利益を出すには、売上高からイニシャルコスト(固定費)とランニングコスト(変動費)を差し引いたものです。

例えば、年間の売上高が2,000万円で、固定費は600万円、変動費が1,000万円だとした場合、

2,000―(600+1,000)=400

利益は400万円です。この場合の損益分岐点比率は、

1,600÷2,000=0.8

で80%です。つまり、イニシャルコストとランニングコストの合計を80%に抑えれば安定して利益を上げ続けられます。もちろん、このパーセンテージが低ければ低いほど高い利益を出せますが、損益分岐点比率は80%を下回っていれば優良というのが一般的です。

正しく利益を計算するには、イニシャルコストとランニングコストを正確に把握していなければなりません。そこで重要となるのが、それぞれのコストの算定です。種類によって算定方法が異なるため、特定の方法はありませんが、ここでは商品の配送に車を利用する場合の車両のイニシャルコスト、ランニングコストの算定方法を紹介します。

イニシャルコストの算定方法例

まず、イニシャルコストに該当するのは、車両を購入する際の本体価格、消費税、自動車重量税です。自動車取得税や自動車税は一定の条件によって非課税になる場合があるため、ここでは省いて算定します。

本体価格が100万円、消費税が10万円。1t以上1.5t未満の新車(普通車・エコカー減税適用なし)で自動車重量税は11,200円のため、合計で1,111,200円がイニシャルコストとなります。

ランニングコストの算定方法例

ランニングコストに含まれるのは、燃料費と自動車重量税です。なお、保険料や車検費、駐車場代などは車両に直接的にかかわるランニングコストではないため別途算出します。そして算定の条件は、どの程度利用するかによって異なりますが、ここでは次の条件で算定します。

年間走行距離:5,000km

供用期間:10年

燃料価格:167.5円/リットル(2022年1月レギュラー平均価格)

燃費:約20km/リットル

(5,000÷20)×167.5×10=418,750

418,750+11,120(自動車重量税)=429,870円

これで、イニシャルコストとランニングコストを足したライフサイクルコストは、

1,111,200+429,870=1,541,070円となります。

まとめ

初期費用を意味するイニシャルコスト。運転資金を意味するランニングコスト。どちらも企業経営において欠かせない数字であり、それぞれの意味をしっかりと把握したうえで常に正しく数字を算定することで、損益分岐点が明確になります。

損益分岐点が明確になれば、「どの程度の設備を導入できるか」「何人まで従業員を増やせるのか」「いくらの家賃までなら出せるのか」など具体的な予算調整が可能になります。逆に「どこのコストを抑えるべきか」「これまでと同じ成果を上げつつコストを抑える方法はないか」など具体的な利益向上の施策も実施できるようになります。

例えば、ネットショップ運営において、集客にコストをかけたにもかかわらず最後の購入にまでつながらない場合、集客コストを抑えてしまえばより利益は下がってしまうでしょう。そこで、集客コストを変えずに購入につながる支払い方法を増やすといった施策も考えられます。

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